第百十九段:南海トラフ巨大地震に備える⑧

 今週から、南海トラフの巨大地震による強くて長い揺れから身を守るには、緊急地震速報が非常に重要になる、と言うことを書きます。
 まずは、簡単に緊急地震速報の原理の説明を。

 

 地震波には、大別して速く伝わるP波(最初の、と言う意味の英語、PrimaryのP)とそれより少し遅く伝わるS波(2番目の、と言う意味の英語、SecondaryのS)があります。
 P波の速度は秒速6~7㎞、S波の速度は秒速3.5~4㎞です。
 緊急地震速報はこの速度の違いを利用します。

 

 すなわち、地震の起こった場所(震源)のできるだけ近いところの地震計がP波を観測すると、気象庁はすぐに震源の位置、マグニチュードを計算します。
 そしてどこに、いつS波が到達するか、そして震度はいくらか、ということを計算します。
 その結果、どこかで震度5弱の可能性があると、震度4になる可能性がある地域に緊急地震速報を出します。

 

 その際、一刻も早く地震をキャッチするために、日本の太平洋側の海底には非常に多くの地震計が設置されています。
 ですから、海底で地震が起こればすぐに緊急地震速報のための計算が始まると考えられます。

 

 P波を観測して緊急地震速報が出されるまでに、普通5~10秒かかるということです。
 図は宇部に最も近い場所で南海トラフの巨大地震が起こった場合を想定したときに、緊急地震速報が出されて何秒後にS波が到達するかを説明したものです。

 

第百十九段:南海トラフ巨大地震に備える⑧

 

 ここでは、震源から宇部までの距離を240㎞、S波の速度を秒速4㎞と仮定しています。
 するとS波が到達するまでにかかる時間は、240㎞÷4㎞/秒=60秒となります。
 緊急地震速報を出すまでにかかる時間5~10秒を、60秒から引くと、55~50秒となります。

 

 すなわち緊急地震速報が出されて強い揺れが来るまでこれだけの時間があるということです。
 過去の例ですと、南海トラフの巨大地震は紀伊半島沖で起こることが多く、もしそうであれば宇部から震源はだいぶ遠くなりますから、S波が到達するまでの時間ももっと長くなることになります。
 この時間に身を守る行動をとればいいわけです。

 

 

 


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