第四段:南海トラフ巨大地震が迫っている ~緊急地震速報の有効活用を~
先週の第三段で、山口県の地震被害想定の中から南海トラフ巨大地震による想定死者数をまとめた表を示しました。
読者の中には気づかれた方もいらっしゃると思います。“風速によって火災の延焼範囲が異なり、それによって被害も異なる、と書いてあるのに、犠牲者数は風速3m/秒も15m/秒も全く同じではないか”と。
確かに死者数については、たまたま風速の違いによって違いはありません。しかしながら負傷者数、重傷者数は風速15m/秒時は風速3m/秒時の約2倍になります。
さて、目的はこれら犠牲者の数をいかにゼロにするか、です。犠牲者は他人事ではありません。まぎれもなく私たち自身がその対象なのです。
負傷したり、命を落としたりする原因は、先週の表からも明らかなように、建物倒壊(家具の移動、転倒も含めて)、土砂災害、火災、津波です。これらから身を守ればいいわけです。
まず津波以外は強い揺れで起こります。
南海トラフ巨大地震が起こると、宇部でも約3~4分間強い揺れが続きます。気象庁震度階(以下震度)は5弱、場所によっては、5強の揺れですから、相当怖いと思います。被害も出ます。熊本地震の時も宇部は揺れました。あの時の震度が4ですから、多分多くの宇部の人は経験をしたことがない揺れを体験することになると思います。
しかしながらこの強く長い揺れから身を守ることはできます。
それは緊急地震速報です。緊急地震速報は大きな地震が起こってから5~10秒後に発表されます。地震の大きな揺れはS波という地震波で起こります。このS波の速度は約4㎞/秒です。
最悪の場合を考えて、宇部に最も近い所で地震が起こったとします。
震央距離が約180㎞あります。S波が宇部に到達するまで、180÷4=45秒かかります。これから5~10秒を引くと35~40秒、すなわち緊急地震速報が出されて宇部に強い地震のS波が来るまでに30秒すこしは時間があるということです。このことを図に示します。
この間に命を守るために安全な場所に移動すれば、少々揺れてもけがをすることはありません。もし緊急地震速報が出されたときに火を使っていたら、落ち着いて火をすぐに消し、落ちてくるもの、倒れてくるもののない広い所に避難しましょう。日ごろからどこに避難するか考えておきましょう。
図 緊急地震速報の利用