第百六段:首都直下地震⑥
表は首都直下地震のうち、これまで対象としてきた最も被害が大きい「都心南部地震」による全壊・焼失家屋の数です。
ケースとして、「冬の早朝」:みんな寝ている時間帯、「冬の昼」:多くの人が仕事などで活動している時間帯、「冬の夕方」:多くの家庭が火を使っている時間帯です。
さて、この表を見て、皆さんどのような感想を持たれますか?
数字が大きいか少ないか、というよりも1の位まで、すなわち有効数字6桁まで求めてあり、そんなに精度よく被害が想定できるのだろうか?と、感心したり不思議に思ったりされたのではないでしょうか?
答えは前回にも少し触れましたが、全壊家屋を例にとれば、同じ震度であってもいつ建てられたか、どのような建物か、どのような地盤の上に立っているかなどによって大きくばらつきます。
図は埋め立て地などの造成地など比較的地盤の柔らかい場所、いわゆる軟弱地盤上に建てられた木造家屋の全壊率を震度との関係で表したものです。
この図ではいつ建てられたかをパラメータとして示してあります。
この図より、1980年より前と1981年より後に建てられた家では同じ震度でも全壊率がだいぶ違うことがお分かりいただけると思います。
さらに言えば、古いほど全壊率が高くなっています。
このようなグラフを見ると、なるほど、このようにきれいに傾向が出るのか、と思われるかもしれませんが、実際はこれらの曲線の周りに倍、半分はばらついたデータがあります。
それをエイヤッときれいな曲線で表します。
それを数式で表してコンピュータで計算するわけです。
コンピュータに家屋数をインプットすればそれに全壊率をかけて全壊家屋数が表のように1の位まで出てきます。
出そうと思えば小数点以下も出せます。
表の話に戻ります。
有効数字のマジックは上記の通りですが、問題はこの数字が多いか、少ないか、そしてそれによって人的な被害(死傷者の数など)がどのようになるのかということです。