第二十九段:衛星データを防災に活かす ~二種類のセンサー:光学センサーとマイクロ波センサー~
私が“衛星データが防災に使える”と考えるようになったときは、ちょうど学部長も終わり、学科の所属がそれまでの「知能情報システム工学科」から新しくできた(というより作った)「循環環境工学科」へ移るタイミングでもありました。
「循環環境工学科」は私が学部長時代に文部科学省との折衝や予算の獲得にずいぶん奔走したので、あたかも自分の子供のように愛着があり、何とか成功させないといけないという強い思いがあり、私自身もその学科に移ったという経緯があります。
新しい教育研究分野の“循環環境”、そこで考えたのがJAXAやNASAなどが衛星データを使って地球を観測していますので、それらを使って環境や防災に関する教育や研究を始めよう、ということでした。
実際のところ、環境分野ではかなり研究が進められていましたが、防災分野は先週書いたように時間解像度や空間解像度などいろいろと課題があり、あまり進んでいませんでした。
だからこそチャンスと思い、始めよう、と思ったのです。
田中先生のお陰でJAXAの皆さんとも交流が始まり、様々な生の情報が入るようになりました。
少し専門的になりますが、地球を観測している衛星のセンサーは大別して「光学センサー」と「マイクロ波センサー」の二通りあります(図参照)。
図 人工衛星の2種類のセンサー
(JAXAの図に加筆)
「光学センサー」は太陽光が地球に反射された光を人工衛星が観測する、という仕組みです。
光の3原色、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)(よくRGBと言いますね)の他に赤外線も観測しています。
これらを組み合わせるとデジタルカメラのように、目で見て非常にわかりやすい画像を作ることができます。
しかしながら太陽の出ていない夜は観測できない、また目で見て同じような、ということは雲がかかっていると雲が邪魔をして地上を見ることができません。
一方のマイクロ波センサーは人工衛星が自らマイクロ波を地球に向けて放射して、その反射波を観測します。
ですから太陽は関係なく、昼でも夜でも観測できます。
しかもマイクロ波は太陽光の波長に比べてずいぶん長いので、雲を透過することができ、雲がかかっていても地上を観測できます。
これらの特徴は、防災上非常に有利です。
ただ、光学センサーのように目で見てすぐわかる、いう画像を作るのは非常に難しいという難点があります。
従って、これら二通りのセンサーの特長をうまく活かして利用すれば大きな可能性があることになります。
先週紹介したJAXAの衛星「だいち」はこの両方のセンサーを搭載した優れモノで、早速研究を始めました。
2008~2009年のころです。