第百五十二段:「南海トラフ巨大地震による津波想定①」
国の南海トラフ巨大地震による津波想定結果(平成24年発表)は日本中に大きな衝撃を与えました。
死者最大32万人、その死因の多くは津波でした。
その津波の高さは、高知県の黒潮町で34.4m、他にも20mを超えるところが四国にはたくさんありました。
東日本大震災の時の津波の遡上高が最も高いところで約40mでした。
この津波の遡上高というのは、津波が陸上を駆け登っていく高さ(標高)です。
過去の例ですと、地形にもよりますが、遡上高はだいたい津波の高さの2~3倍に及ぶことがあります。
ということは、黒潮町での津波の遡上高は最悪の場合、34.4x3=103.2となり、100mにも及ぶ可能性があることになります。
津波の高さが20mでも遡上高が60mに及ぶ可能性があるということですから、津波による被害は東日本大震災の時よりももっと大きくなることが想定されたわけです。
ただ、この想定は、東日本大震災が起こる前に想定していた地震の規模(マグニチュード)、および津波の高さをはるかに上回って、「想定外」だったという反省から、「もう二度と想定外といわない」ために、あらゆる可能性を考えて、それらの可能性の最悪の場合の結果を示したものです。
具体的には、南海トラフ巨大地震の震源域は、それまでばらばらに、時には一緒に起こっていた東海地震、東南海地震、南海地震の3つの震源域を全部足した面積の約2倍を想定しています。
また断層のずれ(津波の高さに直接関係します)も、東日本大震災のそれよりも最大約1.4倍大きく考えられています。
しかも高知県の沿岸に高い津波が襲うように大きな断層のずれが起こるように想定されています。
上の図が震源域と大きく断層がずれる範囲を示したものです。
下の図が九州、四国、紀伊半島に至る太平洋沿岸の津波の高さを示したものです。
想定結果はこのように考えられる最悪の場合ですので、こうなる可能性が0とは言えませんが、非常に可能性は低いと私は考えています。
実際、国も、平成24年から10年たち、地方の高齢化と過疎化が進んだ、超高層ビルが増えた、防災対策がある程度進んだ、等の理由で、被害想定の見直しを始めています。
その結果については、また公表され次第紹介したいと思います。