第九十段:線状降水帯予測①

 観測史上最も早く梅雨が明けたかと思うと、再び梅雨のような天気が続き、ここ数日はかつての梅雨の末期のような豪雨が全国各地を襲い、被害が続出しています。
 山口県にも先週「線状降水帯予測」が出され、最大限の注意が呼びかけられました。
 「線状降水帯」という言葉は最近ではすっかりポピュラーになりましたが、線状降水帯の“予測”がこの6月1日から気象庁より出されることになりました。
 これはすごいことと思います。

 

 親しくして頂いていたNHK解説委員のIさんからだいぶ前に聞いた話を思い出しました。
 深夜のNHKの天気予報でのことです。
 酔っぱらってマイクに向かったアナウンサー、「明日は明日の風が吹くでしょう」とやったそうです。
 今だったらとんでもないことになったでしょう。
 昔はおおらかだった、とも言えますが、それくらい天気予報は当たらなかったということの裏返しでもあるのでしょう。

 

 その「明日は明日の風が吹くでしょう」という天気予報のレベルに比べ、局所的な強い雨を予測し、それを公表するということは、雲の動きを気象衛星「ひまわり」で見るだけでは到底できない科学技術の進歩があって初めてできることなのです。
 その科学技術の話は次回以降に譲り、まずは線状降水帯がどのようにできるかを説明しましょう。

 

第九十段:線状降水帯予測①

 

 図-1は気象庁ホームページ「線状降水帯に関する各種情報」にある図です。
 線状降水帯は以下のように発生するようです。

 

①大気の低い層で大量の暖かく湿った空気の流入が続く。
②局所的な前線や地形などの影響でその空気が上昇し積乱雲が発生する。
③湿った大気の状態が不安定な中でさらに積乱雲が発達。
④上空の別の風の影響で積乱雲が線状に並び続け、強い雨を降らし続ける。

 

第九十段:線状降水帯予測①

 

 線状降水帯による豪雨災害と言えば、2014年(平成28年)8月の広島豪雨災害が有名ですが、この時の大気の状態は図-2に示すようにまさにこの通りでした。
 広島市付近の地表付近では豊後水道を通って南から湿った空気が流入(図の太い線)、その一方で上級1500m付近では強い南西の風が吹いていました(図の細い線)。
 下層の南風は広島市の西方にある広島・山口県境付近の山地にぶつかって積乱雲を発生、これに上層の南西風がぶつかって積乱雲を強化しつつ、風下である北東の方へ押し流しました。
 これにより積乱雲が連続的に発生し、線状降水帯を形成、あのような豪雨災害になったのです。(Wikipedia:平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害、より)

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