第百七段:首都直下地震⑦
今週も引き続き首都直下地震のうち、最も被害が大きいとされる「都心南部地震」による被害の話を書きます。
表-1は先週も掲載しました全壊・焼失家屋の数です。
表-2は人的被害、ここでは死者数を要因別(死因別)にまとめたものです。
この死者数は地震発生直後の数と思ってください。
この2つの表を見比べてください。
地震が起こると約8万2000戸の家が揺れや液状化で壊れるのに対して、大半の人が寝ている早朝(冬の)に地震が起こると、死者が約4900人、また火災は2万7000戸焼失するのに対して死者が671人となっています。
ストーブなども含めて最も火をよく使う冬の夕方は火災による焼失棟数が約12万棟に上るのに、火災による死者は約2500人と想定されています。
いかがでしょう、多分読者の皆さんは死者がこれくらいの数で済むのだろうか、という疑問を持たれると思います。
その直感は正しいと思います。
先に、この数は地震発生直後の数と思ってください、と書きました。
時間の経過とともに間違いなく犠牲者の数は増えていきます。
実は、家屋の倒壊によって実に多くの人が閉じ込められてしまいます。
これらの人のことを自力脱出困難者とも言います。
その数は冬の早朝が最も多く、約3万5000人と想定されています。
救助活動をすぐに行うことができないと、また消火活動が追い付かず火災が延焼すると、この3万5000人という数は死者の数へと変わっていきます。
スムーズな救助活動には道路が、消火活動には水道が使えるということが必須条件となります。
しかしながら結論から言うと、残念ながら道路も水道も期待できません。
来週は道路、水道、電気、ガス、通信ネットワークなどいわゆるライフラインの被害についても言及しながら死者の数についてお話ししたいと思います。